代替燃料

昨今の原油高を受けて、代替燃料の開発・利用が現実味を帯びてきた。従来コスト面から採算が取れなかった技術が、原油高騰により採算性が改善することで実用化に向けて前進するようになる。ここ最近、代替燃料のニュースを目にする機会が増えた。代替燃料の例として、バイオエタノール*1と石炭液化技術を紹介しよう。
朝日新聞2006年6月12日記事のhttp://www.asahi.com/science/news/TKY200606110305.htmlより

 環境省は、国内で使用される自動車のガソリンの全量を、2030年までに植物資源からつくるバイオエタノール10%混合(E10)に切り替える方針を決めた。京都議定書の約束期間(08〜12年)に、ガソリン車の新車すべてをE10対応とするための関係法令も整備する。5月末の「新・国家エネルギー戦略」で運輸エネルギーの脱石油化を打ち出した経済産業省と連携し、来年にも見直す京都議定書目標達成計画に政府方針として盛り込む。
 バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシなど植物原料を搾った汁をアルコール発酵させて蒸留してつくる。燃焼時に出る二酸化炭素(CO2)は「植物が生育中に吸収したものの再放出」との考えから、京都議定書では温室効果ガスとしてカウントされない。
 計画ではまず、約束期間中に、ガソリン需要の最大2分の1程度を3%混合させたガソリン(E3)に切り替える。20年にはE10の供給を始め、30年には全量のE10化を目指す。これに伴うCO2削減量は全量転換時までに約1千万トンと試算。30年時点のバイオエタノール導入量は、原油換算で220万キロリットルを見込む。

経済産業省新・国家エネルギー戦略(2006年5月)によると、バイオマス*2由来燃料の導入を急ぐため、バイオエタノールを原料として製造されるETBE(エチル・ターシャリーブチル・エーテル*3に関するリスク評価や、バイオエタノールの活用に係る実証実験を引き続き進めるそうだ。
もう一つ面白い技術として、石炭からガソリンや軽油を精製する「石炭液化」*4技術が注目を浴びている。日本経済新聞2006年6月11日記事の石炭からガソリンや軽油精製、中国に液化技術提供・経産省より

 経済産業省はアジアで、石炭からガソリンや軽油を精製する「石炭液化」事業の普及に乗り出す。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)が持つ独自技術を活用。今夏から中国企業と実証実験を始め、2010年にも商用化する。インドネシアでもプラント建設で交渉を始めた。アジアで豊富に産出する石炭を有効活用し、世界的な原油需給の緩和につなげる。
 石炭液化は粉末にした石炭を高温・高圧状態にしてガソリンや軽油、灯油をつくる技術で、日本は1990年代から研究を進めてきた。コストは1バレルあたり25―30ドルと当時としては割高だったが、原油価格が同70ドル台にまで高騰し、商用化の道が開けた。

石炭からガソリンが取れるとは驚きです。細かいことですが、私の手元にある日本経済新聞2006年6月10日朝刊14版では、「日本は1980年代から研究を進めてきた」とあります。こちらが誤りなのだろうか。

*1:サトウキビ、とうもろこし等のデンプン質や木質系のセルロース等を糖化し、アルコール発酵、蒸留して製造されるエタノール。ガソリンに混合又は代替として利用。我が国では、安全性及び排ガス性状の観点から、揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)により、現在、ガソリンに3%まで混合することが認められている。(出典:経済産業省「新・国家エネルギー戦略」)

*2:バイオマスとは、動植物から生まれた再生可能な有機性資源で生物資源とも呼ばれる。代表的なものに家畜排せつ物や生ごみ、木くず、もみがらなど。

*3:エタノールとイソブテンから製造されるガソリンの添加剤。水との相溶性が低いほか、蒸気圧を上昇させない等の理由から、ガソリンへの混合に際しては、バイオエタノールを直接混合するよりもガソリン品質への影響が少ない。品確法により8%程度まで混合可能。

*4:石炭を粉末状にしてから溶剤と水素を混ぜ、高温・高圧状態にすることでガソリンや軽油を作る技術。