コンパクトシティ構想に思う

青森市は、あえて市街地を拡大させないというコンパクトシティ構想を進めている。少子高齢社会への対応、豪雪対策の軽減を進める上で、極めて興味深い政策である。その構想に沿ったと思われる市当局の判断に、疑問を呈したいと思う。
国道103号(通称観光通り)沿いにある「かねさ」の工場所在地(青森市浜田)。来年春までに工場を移転させることで、広大な敷地が生まれることになる。この敷地に大型店を建設するという計画に、市が待ったをかけている。郊外型商業施設の建設に難色を示しているのである。
市としては、郊外型商業施設へ顧客が流れることにより、駅前商店街の空洞化を懸念しているのであろう。私個人の意見としては、無理やり駅前商店街を残す政策には反対である。そもそも駅前商店街の商店がどこまで顧客確保に努力しているというのか。度重なる駅前活性化政策に便乗して、ぬるま湯に漬かっている印象を受ける。
郊外型大型店を規制し、結果として青森市そのものが空洞化してしまったら、それこそ致命的なことになる。市当局は、市全体への影響を考えて今回の計画を許可すべきである。
駅前商店街の活性化については、商店の集積化を進めるべきだと思う。アウガのような商業施設を新たに建設し、商店街の店舗を入れる。外部からの進出も認めて既存店と競争をさせる。購入商品の宅配、訪問販売の拡充など、高齢世帯への配慮を最大限に行う。立体駐車場の駐車料金は商店利用者については原則無料にする。まずは以上のような提案をしたい。
「かねさ」工場所在地(青森市浜田)は郊外ではない。青森環状道路(国道7号線バイパス)の内部にあれば、市街地だと思うのだが。今のままでは、郊外型商店を(不本意ながら?)認めている弘前市に顧客を奪われるだろう。

東奥日報2006年10月3日記事の大型店規制で事業主と青森市攻防より

 郊外の商業開発抑制を目的に、準工業地域への大型集客施設の立地規制が全国に先駆けて始まった青森市で、郊外型ショッピングモール建設計画をめぐる新たな問題が浮上している。ショッピングモールの延べ床面積は約三万二千平方メートルに上り、建設予定の準工業地域で立地可能な「一万平方メートル以下」を大きく上回る。規模縮小を求める市に対し、事業主体の不動産開発会社サンシティ仙台市)はあくまで予定地の用途変更を求める構えで、両者の攻防が激しさを増しそうだ。
 建設計画が浮上しているのは、青森市浜田のみそ・しょうゆ醸造会社「かねさ」(阿保建司代表取締役)の本社・工場所在地。同社は二〇〇七年春までに、浪岡地区の大釈迦工業団地に本社と工場機能を移転する計画で、五万八千平方メートルの土地は、九月末までに譲渡が完了した。
 サンシティは、跡地に食品スーパーやホームセンターなどの複合商業施設を建設する予定で、〇七年十二月オープンを目指している。
 だが、市は十月一日に施行した条例で、一万平方メートルを超える店舗や飲食店、映画館などの集客施設を、準工業地域に建設することを原則禁止した。
 同市は改正中心市街地活性化法に基づき、国に「中心市街地活性化基本計画」を提出する予定だが、この際に必須の条件となる準工業地域への立地制限を、前倒しで実施した形だ。
 八月、条例制定の動きを知ったサンシティとかねさは、市に対して施行時期の延長や十分な説明を求める意見書を提出した。しかし、市は受け入れず、九月二十日の市議会で条例は可決された。
 サンシティは「都市計画は各自治体の考えで、あれこれコメントする立場にない」としながらも、建設予定地の用途を準工業地域から、大型商業施設が建設できる「近隣商業地域」などに変更するよう市に求める方針だ。市が審査会を開き、認可すれば、ショッピングモールの建設が可能になる。
 しかし、市は「できれば用途変更ではなく規模縮小で対応していただきたい」(都市整備部)との立場だ。
 もしショッピングモールの計画が頓挫すれば、サンシティが膨大な損害を被ることになりかねないだけに、かねさの三浦三生常務取締役は「売り主の道義的責任から、計画通り開発が進むよう、サンシティを後方支援していく」と強調する。

東奥日報記事2006年10月12日記事の青森市が中心街活性化計画案発表より

 青森市は十一日、郊外の無秩序な開発に歯止めをかける「コンパクトシティ」の理念に基づき、新たに策定する中心市街地活性化基本計画案を発表した。柱となるのは、四年後に迫った新幹線開業で急増が見込まれる観光客を中心街に呼び込むため、歩きながら楽しんでもらう「ウオーカブルタウン」の取り組み。具体的には現青森駅前の広場整備、海浜地区への文化観光交流施設(ふるさとミュージアム)建設、パサージュ広場の機能向上−などを挙げている。また、高齢世帯などの街なか居住も推進する。
 六月に中心市街地活性化法が改正され、国の財政支援を受けるためには、基本計画が総理大臣に認定されなければならなくなった。青森市は今回の計画期間を、新幹線開業を挟む二〇〇七年度から五年間と設定。県内外から注目されている「コンパクトシティ」の実績を掲げ、全国でも数カ所とみられる総理大臣認定を目指している。
 計画案では、最終年度までに達成すべき数値目標として、中心市街地の観光施設入場者数を約六十九万人(〇五年ベース)から約八十二万人に、歩行者通行量を約五万九千人(同)から約七万一千人に増やし、空き地・空き店舗率は10.7%(同)から8.8%に減らすとしている。
 現青森駅の駅前広場にはバスターミナル、バスプール、観光案内所を設置。海辺空間へ向かう途中に、ねぶた祭津軽三味線を通年で体験できる「ふるさとミュージアム」を建設する。八甲田丸は「近代資料館・博物館」としてリニューアル整備を図る。パサージュ広場周辺は、民間のホテル整備などと連携し、にぎわいづくりを進める。

何度も言うけど、青森市浜田に大規模小売店舗が建設されても、郊外の無秩序な開発ではない。むしろ都市計画に収まった秀逸な開発である。市全体の経済規模や利便性を向上させながら、市街地の活性化を進めなければならない。無理やり市街地を生き残らせるのは却って不自然であり、市全体に閉塞感をもたらすことになる。
なぜ豪雪地帯が「ウォーカブル(歩ける)」なの? 雪や風に当たらなくても店舗を移動できるという意味でウォーカブルというのなら理解できるが。