青森空港道路を考える
青森県内の有料道路の利用状況はすこぶる悪い。住民は有料道路の便益を評価せず、あえて避けているようである。
青森空港有料道路(通行料200円)の利用状況も大変悪い。高田バイパスの開通により空港道路方面への車両は増えたが、多くの車が周辺の道路に迂回する状況となっている。
そんな折に、次のようなニュースが飛び込んできた。東奥日報(2008年3月26日)記事の「青森空港への迂回路通行車に課金」によれば
県道路公社は、利用率の低迷が続く青森空港有料道路について、新たに仮設料金所を設け、現在の料金所を避けて迂回(うかい)している車が、どの程度有料区間に移るかを調べる実証実験を行う考えだ。今後、国土交通省などと話し合いながら実験の期間や開始時期を決める予定で、早ければ六月にも実施する。二十五日に青森市内で開いた同公社の役員会で報告した。
「実証実験」とはいえ驚きの実験だ。迂回道路のうち、県道青森浪岡線の旧道は県の管理なので料金所は作りやすいとしても、大谷方面の迂回路は県道ではないので料金所の設置は易しくないだろう。
青森空港道路の総事業費は61億円。計画では30年間有料化し、2017年7月18日まで料金を徴収する。今後9年間は有料化が続くことになる。問題は迂回路に車両が流れると、料金が徴収できず計画そのものが見直しに迫られること。実際今のままでは何十年かけても償還(事業費の完済)はできないだろう。
青森空港道路について問題点は2つある。1つは周辺道路とのバランスの問題だ。周辺の整備された道路がすべて無料化されているのである。総事業費74.5億円の青森中央大橋は通行料100円を廃止し、税金を投入して償還する計画となった。全体事業費190億円の「ほたて大橋」、正式には国道4号土屋バイパスは国の事業ということで無料である(参考資料(PDF))。
平内から浪岡に走ると、スイスイとほたて大橋、青森中央大橋、高田バイパスは無料なのに、空港道路だけ有料となる。しかも有料区間が短く、料金が高いという印象は拭えない。事業費が最も安かった空港道路だけ有料というのも納得がいかないだろう。
もう1つの問題点は迂回路が比較的便利であることだ。旧道は距離は長く急勾配もあるが、比較的整備されている。大谷方面の道路は急勾配であるが、比較的良好に走ることが可能だ。迂回に伴って時間もガソリンも余分にかかると思うのであるが、多くの住民はあまり気にしていないようだ。便利な迂回路があったら、あえて有料道路は通らないだろう。
青森空港道路について、大きく分けて2つの対策が考えられる。1つは有料道路を無料化し、債務はすべて税金で賄うことである。メリットとして往来が活発化し、青森と弘前を含む都市圏の経済活動を促進する可能性がある。経済を活発化させ、税金の増収を狙うこともできるかもしれない。デメリットとしては、「受益者負担」の原則から外れていること、県としてもこれ以上の財政負担はほぼ無理であることが挙げられる。「言うは易く、行うは難し」なのである。
もう1つの対策は迂回路を通行禁止とし、是が非でも料金を徴収すること。メリットとしては確実に料金を徴収できるようになること。デメリットは、国道7号線への迂回が起こり、回収が進まなくなる可能性があることだ。記事中にある迂回路の有料化もこちらの対策と同様の効果をもつ。迂回路は事故や災害に対する保険として存在している側面があるので、ある程度整備しておくことができる。
個人的な印象であるが、ガソリンの消費も気にせず迂回している様子を見ると、是が非でも料金を徴収する手段はあまり有効ではないと思われる。