大鰐町の財政危機

青森県大鰐町の財政が危機的状況に陥っている。大鰐町の場合、第三セクターの債務が大きく、その総額は73億円と、自治体が行政サービスをするのに必要となる一般財源の額(標準財政規模)の2倍以上になっている。
大鰐町の連結の実質赤字比率は約36%。同比率が40%に達すると、町は財政破綻とされ財政再生団体に転落する。著しい行政サービスの低下と公共料金の値上げを強制する「第二の夕張化」は是が非でも避けたい。行政改革は当然急務であるが、草の根運動も含め県民が一体となった支援体制も必要だろう。
2008年3月29日付日本経済新聞(地方経済面(東北B))の「青森・大鰐町、07年度赤字比率36%に、「第2の夕張」回避行革急務(東奔北走)」より

 青森県大鰐町が綱渡りの財政運営を続けている。スキー場事業の第三セクターを巡る不適切な会計処理が響き、二〇〇七年度の普通会計決算は赤字に転落する見通し。もともと病院など特別会計の赤字が大きく、連結の実質赤字比率は三六%程度に高まる。〇八年度決算で同比率が四〇%に達すると、町は財政破綻とされ財政再生団体に転落する。「第二の夕張」を避ける行政改革が急務だ。
 三月町議会では、第三セクターの大鰐地域総合開発の処理問題が焦点となった。町は三セクの運転資金向けの短期貸付金(約二億三千四百万円)について、年度をまたいで貸し借りする不適正な会計処理を実施。赤字隠しとも取られかねない対応とみて、総務省などが是正を求めた。
 町は三セクに損失補償し、貸付金を金融機関から借り換える内容の〇七年度補正予算案を町議会に提案。町の赤字が見えにくい損失補償に抵抗を示す議員が多く、議員提案でこの部分を削除した上で予算を可決した。
 町の〇六年度の普通会計決算は約五千万円の黒字。だが三セクの借り換えができないため、〇七年度普通会計決算は約二億円の赤字となる公算が大きい。二川原和男町長は「三セクの債務がそのまま町の欠損になる。連結実質赤字比率に跳ね返ってしまう」と険しい表情で語る。
 一月に公表した町の行財政改革計画案は連結赤字比率を〇七年度三〇%、〇八年度三一・六%と見込んでいた。普通会計の赤字が加わると、比率はそれぞれ六ポイント程度高くなる。思わぬ出費が重なれば、〇八年度に再生団体基準の四〇%を超える可能性がある。
 スキー場を巡り、町は三セクなどと損失補償契約を結んでいる。存続を前提に二十年間で約六十億円を金融機関に返済する約束だ。二川原町長は「存続させないと、損失補償部分が一括請求される恐れがある」とし、三セクを存続させる考え。
 町は四月から職員給与を七%削減する一方で、赤字を抱える病院、観光事業の見直しを進める方針だ。様々な意見があるスキー場の将来像については、住民らとの懇談会を開く。
(中略)
連結ベースの改革不可欠 赤字比率40%で再生団体に
 財政健全化法に基づき自治体は二〇〇八年度決算から連結ベースでも国による財政状況の評価を受ける。市町村の場合、〇八年度の連結実質赤字比率が四〇%に達すると再生団体になる。連結ベースでの財政改革が不可欠だ。
(中略)
 青森県では大鰐町のほか、黒石市むつ市なども〇六年度に連結赤字となった。

2008年4月6日日本経済新聞朝刊の「全国の三セク債務、5000億円弱、自治体負担に、新法導入で本社試算」より

 全国の第三セクターが抱える債務のうち、五千億円弱は地方自治体が肩代わりを迫られる可能性の高いことが、日本経済新聞の試算で明らかになった。自治体財政を三セクなども含めて監視する地方財政健全化法の適用が二〇〇八年度からスタート。三セクが財政に与える影響は大きくなる。同法に基づき健全化のための歳出カットを迫られる自治体も多いとみられ、地方財政の新たな火種になりそうだ。
(中略)
三セクの借金のうち、自治体が九割以上の負担を迫られる実質負担先は、茨城県古河市古河市住宅公社や北海道芦別市の「星の降る里芦別」、青森県大鰐町大鰐町開発公社など五十六法人あった。
 大鰐町では他の三セクにも損失補償しており、総額は七十三億円と、自治体が行政サービスをするのに必要となる一般財源の額(標準財政規模)の二倍以上。健全化法は将来負担比率が一定以上になると自治体に早期の健全化を求める。適用は〇八年度決算からだが、同町はこの基準を上回る見込みだ。芦別市も損失補償が標準財政規模の三割を超え、財政の圧迫要因となっている。
(中略)
 三セクが破綻して損失を負担することになれば、大鰐町のような小さな自治体では財政再生団体に転落する事態も考えられる。財政が破綻した北海道夕張市では行政サービスが低下する一方で、各種の料金・手数料が引き上げられた。三セクの経営次第で住民生活にも影響が及ぶため、一段と厳しい監視が必要となりそうだ。