小島一郎−北を撮る−

青森県立美術館では、「小島一郎−北を撮る−」展が開催されています(2009年3月8日まで)。
「青森」と聞いて想像するもの。灰色の空、吹きすさぶ雪、こごえるような寒さ。
青森に来て、このイメージがいかに一面的であったかを知るようになりましたが、多くの人が「青森」に対して思うものではないでしょうか。
昭和30年代、この厳しい「青森」の姿を写真技術を駆使して、日常を超えたイメージにまで高めた写真家がいました。その人の名は「小島一郎」(1924〜1964)。青森市に生まれた小島は、1956(昭和31)年頃から写真を始め、故郷青森を被写体として、精力的に撮影を続けました。小島の父が営む写真店には、若き沢田教一*1が勤めたこともあり、二人の偉大な写真家が意外なところで繋がりを見せます。
1961(昭和36)年、プロのカメラマンを目指して上京し、カメラ芸術新人賞を受賞するなど鮮烈なデビューを飾りました。その後も活躍が期待されましたが、師と仰ぐ名取洋之助氏の逝去(1962年)もあり、東京での活動はなかなか苦しいものであったようです。焦燥感に苛まれつつ敢行した北海道での撮影行が小島の寿命を縮めてしまい、1964(昭和39)年7月に39歳の若さで急逝しました。
短い人生ながらも鮮烈な写真で我々を驚かしてやまない小島一郎。その魅力に是非触れて頂きたいと思います。

つがる市 木造 1958年
写真界の「ミレー」と呼ばれるのにふさわしい作品。展示作品は想像以上に小さく、パンフレットの写真よりも小さいです。遠くは明るいのに農民は影のように写っています。顔の表情は見えず黙々と作業している様子が印象的です。

つがる市 稲垣付近 1960年
小島の写真は「雲」の姿が素晴らしい。天変地異を感じさせるほどに怪しげに光る雲の下、吹きすさぶ風と雪を受けながら、女たちは静かに進んで行きます。風景に同化して消えていきそうな姿も印象的です。
 
<本ブログ読者向け、耳寄り情報>
青森県立美術館ミュージアムショップでは、「1月限定」で過去の展覧会のカタログが何と「半額」で販売されています。シャガール展、工藤甲人展、棟方志功・崔榮林展、舞台芸術の世界展の4種類。1000円程度でカラー図版いっぱいのカタログが買えてしまいます。個人的には「舞台芸術の世界展」のカタログがお気に入りです。
 
<ご紹介>
小島一郎展の感動をいつまでも・・・。小島一郎の複製写真を「バランテック美術工房」で購入することができます。美術館のミュージアムショップでは、現物を見ながら購入できます。
オリジナルプリントを、色再現デジタル撮影技法で撮影デジタル化
・ジクレー技法により刷り枚数を限定、1点づつ精密に印刷
・「シルバーラグ」という、モノクロ再現力に優れたプリンタとの相性が特に良い、最高級銀塩調インクジェット用紙を使用
という特徴を持つ複製写真です。限定制作番号(エディションナンバー)入りというのもコレクター魂をくすぐりますね。

*1:報道写真家(1936〜1970)。1966年にベトナム戦争を撮影した『安全への逃避』でピューリッツァー賞を受賞。1970年、34歳の若さで死去。