青森県民必読の書「北のまほろば」

作家・司馬遼太郎が青森に与えた美称「北のまほろば」。かつて度重なる飢饉にあえぎ、冬になれば厳しい雪に閉ざされる青森の地が、なぜ「まほろば」(素晴らしい場所の意)なのか。悠久の昔、青森県全体は豊かな土地であった。司馬はいう。「山や野に木ノ実がゆたかで、三方の海の渚では魚介がとれる。走獣も多く、また季節になると、川を食べもののほうから、身をよじるようにして−サケ・マスのことだが−やってくる。そんな土地は、地球上にざらにはない。」
農業技術が発達した現代において、青森県はもはや飢饉に襲われる土地ではない。山からは伸び伸びと育った山菜や鳥獣、海からは冷たい海水に身を引き締めた魚介類、田畑からは大地の養分をたっぷり吸った農作物が豊富にとれる。けがれなき陸海空の恵みをそのまま享受できる青森県は「北のまほろば」に相違ない。この偉大さに気付いている青森県民はどれくらいいるだろう。

北のまほろば―街道をゆく〈41〉 (朝日文芸文庫)

北のまほろば―街道をゆく〈41〉 (朝日文芸文庫)

街道をゆく41 北のまほろば」は、青森県民必読の書である。青森県の歴史、地理、文化、風俗習慣をこの一冊で学ぶことができる。「街道をゆく」の中で、縄文時代の繁栄にいち早く気付き「北のまほろば」の美称を与えた司馬であったが、その連載の最中に三内丸山遺跡が発見されて大変喜んだという。司馬遼太郎の達観に改めて脱帽である。