弘前・もっぱら庵

豪雪の影響で歩道に分厚い雪が残るものの、少しだけ陽気に恵まれた早春の弘前。正直教えたくない名店「もっぱら庵」にて、一足先に春を感じてきました。Sadistic YUKIさんの記事ジャミンさんの記事を拝見して、間違いのないお店と確信しての訪問です。さくらさんテンポさんにご一緒頂きました。
細長い店内は、厨房と向き合うようにカウンター席が並びます(2階に座敷あり)。店主は某料亭旅館の料理長を務められた経歴を持ちながら、お客さんの喜ぶ顔が見たいと、あえて小さな店を開きました。小料理店特有の堅苦しさはなく、店主と娘さんの軽妙なやり取りには心も和みます。
「もっぱら庵 6点」(3000円のおまかせ)でお願いしました。

先付は、細長いお皿に並ぶ繊細な小料理の数々。左から、カマンベールチーズに花麩、締め鯖にキウイ、柚子にイクラ。一見意外な組み合わせに見える食材が、かるたの読み札と取り札のような絶妙なコンビネーション。濃厚なチーズにさっぱりとした花麩。締め鯖の脂にはキウイの酸味。柚子の芳香に包まれるイクラの旨み。色彩の豊かさに見とれること、限りなし。

春の訪れを予感させる食材から、梅肉を乗せたウドにハマグリ。凍る湖を連想させるワカサギを甘露煮に仕上げ、冬の名残も感じさせます。ウドの食感とハマグリの旨みに、ワカサギの甘み。見た目だけでなく、味わいの調和が何とも見事。

春を告げるホタルイカに、雛祭りが近いということで三色卵。遊び心も満載です。

大鰐名産のモヤシを使った和え物も味わい深い。クコの実をさり気なく添えるところが達人の技。

マグロとヒラメのお造り。舌に乗せた瞬間分かる素材の良さ。嫌みのない味わいに思わず笑顔がこぼれます。この一皿にも達人の技が光るのですが、あえて書かないことにします。

クツクツと音を立てて、食欲を掻き立てる鶏鍋。プリンとした鶏肉を頬張れば、ジュワッと旨みを解放します。琥珀色に澄んだスープは、鶏から出る脂が程良く漂って、絶妙な味わいに仕上がっています。店主が秋田で学んだという味わいは、胃に染みわたります。

蒸し焼きにされたタラに、和風ソースを絡めた椎茸をたっぷり添えて。胡椒を効かせたタラに、程好い酸味とまろやかな旨みを湛えるソースが何とも絶妙。赤黄パプリカを忍ばせて、ちょっと洋風テイストな仕上がりが嬉しいサプライズ。

生ガキにスダチ酢橘)。Sadistic YUKIさんがさくらさんの記事でご指摘の通り、スダチの種が丁寧に取ってある所が「もっぱら庵」なのです。

鮭おにぎりを軽く炙ってお茶漬けにして供されます。非常に細かい刻み海苔が繊細な味わいを奏でます。

さくらさんイチオシの「華一風」。豊かな芳香が鼻をくすぐり、キリリと爽やかな飲み口。色彩豊かな料理がグラスにキラキラと万華鏡のように反射します。


料理人の原点は「味」へのこだわり、と店主。精進に精進を重ねて到達した境地が、この小さな店で親しみやすく卓越した料理を提供することだとしたら、達観と言わざるを得ません。店主から最大限のおもてなしを受けるためにも、是非予約されることをお勧めします。
 

お食事処 もっぱら庵
青森県弘前市本町107
0172-38-3887
18:00〜22:00
日曜休