深刻な医師不足

青森県では医師不足が深刻な問題になりつつある。
東奥日報2006年3月9日記事・4月から産科休診/青森労災病院より

 青森労災病院八戸市橋本功院長)が四月から産科診療を取りやめ、新規患者の出産に対応しない方針を決めたことが八日分かった。弘前大学医学部から派遣されている産婦人科医二人のうち一人が津軽地方の病院へ異動となるのが理由。青森労災病院は事実上、二月以降出産予約を受け付けておらず、一月末までに出産予約を受けた八十九人については「弘大の応援を得ながら対応する」と説明している。一方、弘大は四月から、むつ総合病院(むつ市)へ派遣する産婦人科医を一人増員し、三人体制とする意向を示した。
 青森労災病院産婦人科は現在、医師二人体制で診療を行っており、ここ数年は年間二百−三百件の出産に対応。本年度は一月末現在で百五十八件の出産に対応してきた。

全国的に見ても産科と小児科の医師が不足しているため、地域医療ではこれらの診療科で医師不足が顕在化している。青森県は医師の供給源として弘前大学(弘大)に依存しているが、弘大の医師供給能力そのものが低下しているのである。
陸奥新報2004年9月30日記事・自治体病院の再編を急げによれば、弘前大学医学部卒業生の約4割しか県内の病院に残らない(研修を含む)ため、医師不足は当然と指摘する。過疎の問題は形を変えて残っているようだ。
慢性的な医師不足の下では、産科医師の派遣先を集約せざるを得ない。青森労災病院八戸市)への派遣医師を削減したのは、その一環である。
デイリー東北2005年1月13日記事・弘大医学部、産科医の県南配置2病院に集約によれば、医師不足の要因として、弘大の卒業生が県内に残らないこと以外に、県の自治体病院の機能再編が進まないこともあるという。要因が何であれ、安心してお産ができないというのは納得できない。受け皿として民間病院の体制は整っているのだろうか。
先の記事で、むつ市のむつ総合病院に医師が集約されている理由は、この病院が臨床研修医指定病院で、かつ県の「地域周産期母子医療センター」に指定されていることによる。厳しい言葉を用いれば、より過疎が深刻なむつ市に重点的な対策を立てたということであろう。

厚生労働省都道府県別にみた人口10万対医療施設従事医師数の年次推移によれば、人口10万人当たりの医療施設従事医師数(2002年)は全国平均195.8人に対して、青森県は164.8人となっている。東北地方は医師不足に悩むが、北海道は医師不足から脱して全国平均を上回っている。

少子化が問題視される中での産科医と小児科医の不足。都会と地方の格差が拡大傾向になる中での医師の偏在。地域の医師不足問題は、まさに日本が抱える問題の縮図になっている。最優先課題として国と地方に取り組んでもらいたい。