ジブリの絵職人・男鹿和雄展

男鹿和雄展

東京都現代美術館「ジブリの絵職人・男鹿和雄展」が開催されています。会期は2007年9月30日まで(開始は2007年7月21日)。
男鹿和雄氏は「トトロの森を描いた人」です。特に「となりのトトロ」ファンは必見の展覧会になっています。「ほこらのある大樹」はトトロの名シーンの一つであるだけでなく、トトロの主題にもなっているように思います。古来人間は自然に対して畏敬の念を抱いていたはずで、いつの間に自然がコントロールできると思い上がってしまったのでしょうか。
展覧会カタログで高畑勲氏が述べるように、リアリティだけを追求しても空気感は失われるし、逆にラフな筆使いだけでは自然を実感させるのが難しくなります。リアリズムと抽象の間で、絶妙な筆使いで自然を実感させるのが、男鹿氏の「腕」と言えましょう。アニメの背景画として、どこを大げさに表現し、どこを丁寧に描き込むか、という視点で見ると大変興味深いです。
改めて「となりのトトロ」(1988年)の原画を見ると、その美しさに見とれてしまいます。田園に雨が降ってきた情景の描写は「神業」的で、路面のぬかるみ、暗い雨雲、ざわざわとした森、描かれたすべてが五感を伴って伝わってきます。

「夏服の少女たち〜ヒロシマ・昭和20年8月6日」(1988年)に使われた学校の廊下の絵では、窓から差し込む優しい光と、廊下の奥のまぶしい光が描かれています。作者は「光をふくらませる」という表現を用いていますが、廊下の先が光ることで永遠につながるような時間性も生まれているように思います。
間もなく広島・長崎の原爆記念日を迎えます。展覧会では原爆を扱った詩の挿絵も紹介しています。原爆ドームを背景にした灯篭流しの絵には、その優しさに包まれた明かりに目頭が熱くなってしまいました。
最後に、「男鹿和雄展」を見に行こうと考えている人にアドバイス。チケット売り場が大変混み合いますので、事前にローソンチケットなどで入手しておくとスムーズです。あるいは待ち時間を十分考慮の上、お出かけ下さい。(もっと言えば、こういうチケット販売方法でいいのか疑問です。)
カメラを持っていくと、出口近くでトトロのぬいぐるみを撮影できる場所があります。記念撮影をお考えでしたら、カメラを持って行きましょう。また、ジブリグッズも多数販売されています。絶対欲しくなりますので、お金も十分持っていきましょう(笑)。
 
「夏服の少女たち」 (C)NHK