舞台芸術の世界

舞台芸術の世界

青森県立美術館では、会期あとわずかですが2007年10月28日(日)まで、「舞台芸術の世界−ディアギレフのロシアバレエと舞台デザイン−」が開催されています。
ほぼ100年前の20世紀初頭ロシア。興行主セルジュ・ディアギレフはバレエこそが舞踊、美術、音楽を統合させた「総合芸術」であるという信念のもと、ロシアの舞踊家、画家、音楽家からなるバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)を組織し、1909年パリにデビューしました。
舞踊、舞台、衣装、音楽、そのすべてが斬新で、鮮烈な印象と衝撃を与えました。舞台衣装を例にとれば、斬新な色使いと装飾を施した衣装で、チュチュに代表される古典的なバレエ衣装とは似ても似つかないものでした。
20世紀初頭に突然現れたバレエ芸術の黄金期。野性的なリズムを得意としたイーゴリ・ストラヴィンスキー、官能的かつ非西欧的な美学に彩られた舞台美術のレオン・バクスト、そして圧倒的なテクニックと両性具有的な魅力を備えた天才ダンサーのワツラフ・ニジンスキーが、この時代に活躍しました。
この展覧会は、バレエ芸術の黄金期を垣間見る貴重な機会となっています。オペラと同様に「総合芸術」まで高められたバレエ。バレエを取り巻く「美」の数々、バレエが絵画芸術をはじめ各方面に与えた多大なる影響について、その多くを知ることができるでしょう。
バレエ音楽には関心がありましたが、バレエそのものに対しては全く知識がありませんでした。館内で映写されているバレエの映像と音楽を見て、普段聞いていたバレエ音楽が果たしていた役割を初めて知りました。展示を見るうちに、バレエの世界にどんどん魅了されていきました。

素晴らしかったのが、ジョルジュ・バルビエの版画集「ワツラフ・ニジンスキー」。アール・ヌーヴォー調で、美しい線と大胆な構図がとても印象的。ニジンスキーの華麗な舞踊の世界をそのまま見るようです。詳しくは、こちらのジョルジュ・バルビエ「ニジンスキー」のページで素敵な紹介がなされています。
特に、「薔薇の精」(上の画像)については、版画も展示されていましたし、最近演じられたバレエの映像も紹介されていました。お人形さんのように可愛らしい少女と、しなやかに舞い踊る薔薇の精。美しい版画を見て、バレエの華麗な舞踊を見て、素晴らしい音楽を聞いて・・・美術館の空間ながらも、完全にバレエの世界に魅了されてしまいました。
会期は今週末で終わりです。未見の方はだまされたと思って、見に行ってください。本当に素晴らしい展示です。