宇宙開発の費用対効果

機体の比較

経済学では費用と効果(便益)を比較せよと教えられます。これは宇宙開発の問題に対しても当てはまります。
日本経済新聞(NIKKEI NET)2005年9月20日2018年に月面着陸、費用は1040億ドル・NASAより

 【ワシントン=吉田透】米航空宇宙局(NASA)のグリフィン長官は19日、2018年をめどに宇宙飛行士を月面に送り込む計画を発表し、総事業費が1040億ドル(約11兆5000億円)に上るとの見通しを示した。計画実現へスペースシャトルの後継機となる4人乗りの多目的宇宙船(CEV)を2012年にも完成させる方針だ。
 NASAは多目的宇宙船を先端部に取り付けて打ち上げる大型ロケットと、月面着陸機や資材などを運搬する超大型ロケットも同時に開発する。超大型ロケットの方はアポロ計画のサターンV型ロケット(全長約110メートル)に匹敵する大きさを持ち、最大125トンの資材を搭載できる。

日本経済新聞2005年9月21日9面によれば、2018年までの13年間毎年平均80億ドル(約8900億円)もの資金を投入することに米議会と米国民の支持が得られるか不透明だという。過去のアポロ計画は東西冷戦下の国威発揚という目的により費用を度外視したが、現在では国際情勢は大きく変化しており米財政の巨額赤字も深刻である。
総額約11兆5000億円という費用に対して、宇宙開発を行うことの効果(便益)はどれくらいのものがあるのだろうか。人類の発展に資するという壮大かつ莫大な効果、航空宇宙に関連する技術開発の効果、夢も希望もある。しかし、生存に対する危機(戦争の可能性)を背景とした冷戦期の国威発揚の必要性と比べれば、緊急性が低いと見ることもできる。ハリケーンカトリーナの被害に対する復興支援に莫大な費用がかかるとされており、ますます米国民の支持が得にくいであろう。
同記事によると、従来のシャトルでは打ち上げ時の落下物による機体破損が2度も大惨事を招いたとして、新計画ではロケット先端部に飛行士が乗るアポロ方式が選択されたという。アポロ計画の優位性には改めて驚かされる。当時の最新技術によるコンピューターは現在のゲーム機の性能に劣ると言われるのだが。
(写真はNASAのHPより機体の比較。右2つが新計画によるもの。その左がスペースシャトルで、一番左はアポロ計画のサターンV型ロケット。)

http://d.hatena.ne.jp/aya1227/20050920/p1
NASA - How We'll Get Back to the Moon