所得格差と教育格差

所得格差が教育格差につながっているというが、もともと教育費で見た教育格差はあったと思う。ただし、教育格差そのものが顕著になった可能性がある。
読売新聞2006年3月14日記事・進学も格差…子どもへの期待や費用、所得で開きより

 家庭の所得によって、子どもの進学への期待や習い事にかける費用に格差が出ていることが、「こども未来財団」(東京都港区)の調査で明らかになった。
 調査は昨年10月、20〜44歳の既婚男女約2400人に行い、回答者の家庭所得を年収「200万円未満」から「1000万円以上」まで6分類した。
 1000万円以上の家庭では89%が子どもに大学・大学院進学を希望しているのに対し、200万〜400万円未満は44%、400万〜600万円未満は60%。200万円未満の家庭では30%が「特に希望はない」と答えた。
 第1子に習い事をさせる割合や平均月謝額も所得に“比例”。1000万円以上の家庭の79%が習い事をさせ、約2万7000円の月謝を払っているのに対し、400万〜600万円未満と200万〜400万円未満の家庭では、それぞれ52%、約1万2000円と38%、約9600円だった。調査にかかわったお茶の水女子大の坂本佳鶴恵教授(社会学)は「子どもの教育費は『かかる』というよりも『かける』ということが明確に表れた。所得差が教育格差につながりかねない。子育て世帯への教育費の支援が今後の課題になる」と話している。

ゆとり教育の浸透により完全に公教育は破壊された。公教育を埋め合わせるためには、塾に通うしかない。塾に通う生徒は、簡単なことしか教えない公立学校の教員を馬鹿にし始める。威厳を完全に失った教員は士気を低下させ、結果として公教育をさらに荒廃させる。
一方、所得水準の低い家庭は塾に入れることができないため、空っぽな知識しか手に入らない。昨今において教育格差が顕著になったのは、公教育の荒廃による部分が大きいと考える。従来より教育費で見た教育格差はあったが、教育費が低くても公教育で一定の教育水準を確保できた。しかし昨今では、教育費を捻出できない家庭は程度の低い教育しか受けらず、実質的な教育格差は広がったのである。
ゆとり教育がもたらす危機感により、従来教育費をかけなかった中間所得層も教育費を増やして、教育費で見た格差を広げた可能性も考えられる。
いずれにせよ、ゆとり教育は所得格差による教育格差を助長してしまった。教育においても、公的機関の役割(公教育)を軽視して市場(塾、家庭教師など私的教育)にゆだねることは、弱肉強食(格差進展)の流れを強固にする働きがあるのである。
それにしても、国家の根幹に関わる教育問題をなぜ国民的議論にせず、一部官僚の筋書き通りに進めてしまったのであろうか。