弘前・一閑人(いっかんじん)

一閑人

弘前市の繁華街・土手町から五重塔方面に向かって歩くと狭い路地が続く。城下町特有の入り組んだ小道は、当てもなく歩くにはむしろ心地良い。土渕川に沿って歩けば、満開を迎えた大きな桜が優雅に咲き誇る。
うららかなる春の午後、路地の奥にひっそりとたたずむ一軒の蕎麦屋を訪問する。店の名は「一閑人(いっかんじん)」。庭園を眺めながら、こだわりの二八蕎麦に舌鼓を打つことができる。店舗は旧家を改造してモダンな作りとなっている。

「一閑人」の庭園は、旧津軽藩家老・大道寺繁禎が愛したという大石武学流。満開の桜に浮き足立つ季節、庭園の新緑はますます眩しい。

「そばもやしサラダ」。地元・大鰐温泉で栽培される貝割れ大根のように細いモヤシ。正体は蕎麦の新芽。シャキシャキとした歯ごたえが小気味良い。

「天せいろ」。くっきりとした蕎麦とさっくりとした天ぷら。つゆは蕎麦用と天ぷら用の2種類が用意される。

蕎麦はキリッと冷たく引き締まった細打ち。程好い舌触りと心地よい喉越しを味わうことができる。さすが旨い蕎麦だ。江戸前の辛口のつゆは、黒くてどっしりとした味わい。濃厚な出汁が効いている。つゆの量は少なめで、まるでたれのような感覚。蕎麦との相性がすこぶる良い。

天ぷらはさっくりと揚げられている。海老天はプリプリで美味しい。シシトウの苦味、舞茸の香り、カボチャの甘味、春野菜(名前は分からず)の彩り、いずれも秀逸。
開店と同時にお客さんは続々と来店する。正午過ぎには早くも順番待ちの列。大人気店なので早めの来店をお奨めしたい。時間を外して遅くに出かけると、蕎麦が売り切れる可能性が高い(実際それで空振りしたことがある)。夜の営業はかつて予約制であったが、現在はコース料理のみ予約制である。
 
江戸前てうち蕎 一閑人(いっかんじん)
青森県弘前市吉野町7-11
0172-36-6477
11:30〜14:00
18:00〜21:00 (コース料理のみ予約制)
(月曜日は昼のみ営業)
火曜休