弘前・富田の清水


昭和60年(1985年)3月、環境庁(現・環境省)は全国各地の湧水や河川の中から『名水百選』を選びました。その名水百選に選ばれている弘前市「富田の清水」(とみたのしつこ)を紹介します。清水と書いて「しつこ」と読みます。「しみずっこ」が「しづこ」「しつこ」に変化したのでしょうか。

弘前市中心部の土手町から土淵川という小さな川に沿って歩くと、穏やかな川の流れに心が洗われるような思いがします。流れに戯れる鴨などの鳥、風に揺れるタンポポの花。桜の季節には「福住」の大きな桜が美しく咲きます。川に沿って弘南鉄道の電車が走り始めると、静かなクラクションを残して去って行きました。清水橋という橋を渡ると、「富田の清水」を守る木製の建物が見えてきます。すぐ近くには、蕎麦の名店「一閑人」があります。

静かに水が流れているためか、ここだけゆっくり時間が流れているかのようです。
現地に掲げてあった由来を引用しておきます。

『富田の清水』の周辺は、古くから清水の豊富な所として知られ、中津軽郡富田村に所在したことからこう呼ばれてきました。
貞享3年(1686年)津軽藩4代藩主信政公が越前の熊谷吉兵衛を招き紙漉き法を導入した際にこの豊かな清水が紙漉きに使われました。
この清水の水源は東方向約60メートルにあり、昭和の初めの頃までは紙漉きに利用されましたが、その後は生活用水として使用され第1漕第2漕は飲用、第3漕は米、着物の洗い、洗顔用、第4漕は紙漉きの材料や漬け物樽をつける、第5漕第6漕は洗濯用、足洗い等のきまりがありました。
昭和60年(1985年)、身近で清涼な水として古くから地域住民の生活に溶け込み良好に管理されてきたことから、環境庁の名水百選に選ばれました。
平成7年(1995年)7月7日、それまで所有者として管理にあたって来た紙漉町清水共有会から市に寄贈されました。


少し飲んでみましたが、すっきりとして飲みやすい水でした。
弘前をブラリと散歩する際に、是非立ち寄ってみて下さい。