妖怪展 神・もののけ・祈り

青森市本町にある青森県立郷土館で、「妖怪展 神・もののけ・祈り」が開催されています(10月12日まで)。「お化け屋敷」を体験するかのような、恐怖と好奇心が入り混じる興味深い展覧会です。
「妖怪」という言葉は、「妖しい」と「怪しい」という2つの「あやしい」を重ね、人の知恵では理解できない不思議な現象やばけものを指しています。「妖怪」は近代以降に生まれた言葉で、古代や中世においては「もののけ(物の怪)」と呼ばれていました。

↑「百鬼夜行東北大学附属図書館蔵(画像出典:青森県立郷土館ニュース
夜な夜な平安京の大路を歩いたという、姿のない「もののけ」と呼ばれる化け物たち。鬼や獣、古い道具が化けた「つくも神」たちの集団として表現されています。古来より言われる「八百万の神」の思想があるようにも思います。
 
古来人間は未知なるものに囲まれた生活を営んできました。理解できないものは、恐怖や不安をもたらします。恐怖や不安を安心に変える工夫として、人はいつしか畏れ敬うことを学んでいきました。
畏れ敬う対象として、鬼、河童や天狗なども含まれていました。

↑「天狗のミイラ」八戸市博物館蔵(画像出典:まるごと青森

↑「人魚のミイラ」八戸市博物館蔵(画像出典:まるごと青森
いずれも八戸南部家旧蔵。近年のX線撮影調査により、様々な動物を合成して作られたことが判明しています。いずれも実物は大変小さく、その小ささに驚きます。
 
生死に関わる問題は、現代においても未知なる問題ですが、医学が発達していない近代以前にはさらに未知なる世界でした。理解しがたい医学現象があれば、憶測や誤解を交えながら妖怪譚を形成していきました。

「十王図」(鯵ヶ沢町・高澤寺蔵)(画像出典:青森県立郷土館ニュース
死後の世界は最も未知なる世界です。死後裁きに合うなどの伝承は、人々に道徳観念を植え付けるには十分な手段だったでしょう。
最も不可解な存在の一つに、幽霊の存在があります。現世に怨恨などを残した亡くなった者は成仏できず彷徨(さまよ)うといいます。

↑「断首図」弘前市・正傳寺蔵(画像出典:まるごと青森
1976年、テレビの生放送で紹介された時、閉じていたはずの右目が開いたと評判になった掛け軸です。

画像が荒いのではっきりと分からないですが、当時の映像を置いておきますね。
 
近代化の過程で、日本人はひたすら西洋の合理主義を取り入れてきました。全ての現象を「物質的現象」に還元しようとする態度は「科学的」とされていますが、その態度を追求すれば「人間らしさ」が失われていくのも事実です。
理解できないもの、恐いものに思わず手を合わせて拝んでしまう。恐いものにはお札を貼る。そういう行いが自然に現れるのならば、その行為を「非科学的」と片付ける必要は全くありません。これもまた人間なのですから。
 
妖怪展 神・もののけ・祈り
2009年8月28日〜10月12日
(会期中無休)
9:00〜18:00
一般500円、高大240円、小中無料
青森県立郷土館(青森市本町2-8-14) 
017-777-1585
 
<参考>
青森県立郷土館ニュース
http://marugoto.exblog.jp/10242669/