NHK受信料問題

日本経済新聞2005年10月10日13面のクイックサーベイという記事において、NHKの存在意義や受信料問題に関するアンケート結果が示されている。「NHKがなくなりテレビ局が民放だけになったら困ると思うか」との問いに、「困らない」が56.5%という衝撃的な数字が載せられている。この記事を精査してみたい。
内容に入る前に、アンケート方法に対する批判をさせて頂く。調査会社マクロミルを通じてインターネットで全国20歳代以上の1034人が回答したとある。NHK問題を考える時に、「インターネットにアクセスできる人に限定」し調査するというのは問題があると思う。インターネットに限定すれば、若年層と都市部にサンプルが偏ると容易に想像できる。都市部に住む若者には、娯楽も多いのでNHKの存在は民放と大差はなく、低所得なのに受信料を負担されられる不満は高いであろう。今回の調査では、こういう層を相対的に多くピックアップしている可能性がある。

 先日、鹿児島から船で十三時間かかる離島を取材で訪れ、テレビをつけて驚いた。NHKの総合、教育のほか民放が四チャンネルも見られるのだ。今回の調査で「NHKがなくなっても困らない」という人が五七%に上ったこともうなずける。その理由の上位には「番組がそれほど優れていない」「ほとんど見ていない」との答えが並んだ。

鹿児島から船で13時間もかかる離島でさえ、NHK2局と民放4局が見られた感動を記されているが、それはNHKが不要になる根拠ではなく、たまたま僻地でも放送設備が整っていた例に過ぎない。青森は東京から飛行機でわずか1時間ほどであるが、NHK2局以外に民放は3局しか見られない(フジ系とテレ東系が見られない)。何でこんな一例を根拠にしているのか、理解に苦しむ。

 NHKの総合テレビの番組を一覧してみると、ニュースや教養番組のほか、芸能、スポーツなど様々なメニューが並んでいる。 (中略)
 テレビやメディアの多様化が進む中で、NHKの地位は確実に低下している。にもかかわらず、相変わらず総花的な番組を提供してきたことへの不満が今回の不祥事を引き金として、受信料不払いという形で爆発したのではないか。

この記事を書いた記者は、明らかに都市部の現状しか知らないようだ。青森などの地方都市の民放は、日中の番組は基本的にテレビショッピングという質の低い番組である。NHKが総花的な番組作りをしてくれないと、民放を補完したことにならない。番組作りに不満があるのではなく、負わずにすむ負担は負いたくないだけという負担拒否者が多いのも事実ではないのか。
私はNHKを擁護する立場を取りたいと考えているが、NHKの従来の姿勢は決して評価できないし、受信料方式の矛盾と限界も認識しているつもりである。NHK問題は様々な問題点を含んでいるので、短い文章で語れるものではない。時間の都合がつけば、機会を改めて記事にしたい。
とにかく今回の日経新聞記事のレベルの低さに驚いた。