寺山修司記念館

寺山修司記念館

三沢市にある寺山修司記念館は、素晴らしいの一言。青森県の生んだ奇才・寺山修司の世界が体験できる。そこらにある文学館とは全く別物で、体験型テーマパークかもしれない。入り口からして不気味で、森の中にたたずむサーカス小屋のようだ。
展示室に行くと、暗い屋根の下にたくさんの机が並べられている。机の引き出しを開くと、寺山の残した俳句など著作物が現れる仕掛けになっている。机の引き出しを開けて探検して欲しいらしい。
私が訪れた時、ある机に女性が座っていてあまりに動かないものだから、精巧にできた人形だと思ってしばらく眺めてしまった。女性は真剣に展示物を見ていたから、ほとんど動かなかったのだ。備え付けの懐中電灯を使わないと展示物が良く見えない程に暗く、机の上には白熱電球の電気スタンドが置かれている。この電球の光に照らされた女性の黒くて長い髪が印象的だった。見物客が展示物になる。
自伝的小説「誰か故郷を思はざる」からの引用文が、展示室にはいくつも掲げられていた。

中学から高校へかけて、私の自己形成にもっとも大きい比重を占めていたのは、俳句であった。この亡びゆく詩形式に、私はひどく魅かれていた。俳句そのものにも、反近代的で悪霊的な魅力はあったが、それにもまして俳句結社のもつ、フリーメイスン的な雰囲気が私をとらえたのだった。(『誰か故郷を思はざる』)

当時、寺山の名を知らぬ者はいないほどに、高校の俳句界では有名であったそうだ。面白いことに、寺山の通知表にある国語の評定は4であった。
寺山を通じて語られる青森の姿は、淫靡で赤裸々であるが不思議な魅力を感じる。ただし、何も考えずに引用するとこのブログさえもアングラな雰囲気が漂ってしまうのでやめておく。それ程にテラヤマ・ワールドは強烈である。
歴史は寺山の関心を引いていたようであるが、こんな作品が展示室に流れていた。「質問」という名の映像作品で、レポーターがぶつけてくる様々な質問に寺山修司が答えるという形式を取る。その一節。
レポーター「歴史は何かの役に立ちますか。」
寺山「歴史が何かの役に立つと言うより、何かが歴史の役に立ちます。」

http://www.misawasi.com/~shuji-museum/

誰か故郷を想はざる (角川文庫)

誰か故郷を想はざる (角川文庫)