こんな大学はイヤだ

少子化の波を受けて、様々な大学が生存を賭けて学生の獲得競争に奔走している。ある大学が次のアピールをしていることを知って愕然とする。

  1. 市販の高価な教科書を購入するという大学従来の常識を覆し、全教員が作成したオリジナル電子テキストを使用している。
  2. 全教員に対して任期制を導入している。
  3. 教員の授業に対する評価は、学生に対するアンケートで判断される。

第1の点については大学として問題外である。市販の教科書を「高価」と断罪してしまう点がまず寒い。同じ情報を自分一人で収集する努力を考えたら、図書ほど安価なものはない。レベルの低い大学では、学生が本を読む能力を持ち合わせていないので、事実上市販の教科書を用いることができない。
学生の能力不足による教科書を指定できない現状を明文化したものと解釈することもできる。ただ、全教員にテキストの作成という多大な負担を押し付けている点は、高等教育機関の風上にも置けない。第1の点は、本学の学生は本が読めませんし、読む能力を育成することも放棄しましたと解釈すべきである。
第2の点は、大学運営に危機的な状況をもたらす可能性がある。全員が任期制を取っていると、新規に教員を採用する際に、現職教員が自分よりも無能な教員を採用しようとするだろう。自分より有能な教員が大学に入れば、自分の首が飛ぶ可能性があるからである。任期制がもたらす功罪を理解できていない点が何とも寒い。
第3の点は、多くの大学で採用されているものであるが、「学生本位」の名の下で教育が荒廃する可能性がある。学生というのは、概して苦痛を嫌うものである。しかし、能力を育成する手段というのは訓練、すなわち鍛えることであるから、本質的に苦痛を伴うものである。従って、能力育成に不可避であるにもかかわらず、苦痛を与える授業は学生から評価されない。結果として、教員は負荷を与えない、つまり能力が育たない授業を提供することになる。
難しいことは教えないという一面的な尺度で、「難しいけど面白い」分野を全面削除してしまった「ゆとり教育」と同じ構図である。鍛えられないから、学力が低下するのは当たり前である。優しさを誤解するな。

ここまで日本の教育の矛盾を明示したPRは初めて見ました。今から大学を選ぶ人は、よく考えて選びましょう。