女性研究者

最近、女性研究者と話をする機会が増えて、ふと思うことがあった。女性研究者には独身の人、あるいは既婚でも子どものいない人が多い気がするが、事実だろうか。これが事実であったとしても、このことが大きな問題として取り上げられることはほとんどない。高学歴の人では特に出生率が低いのではないだろうか。

平成17年度男女共同参画白書で、この疑問に答えるデータを見つけた。第1部序説第2節1・女性研究者の活動実態より次のことが分かる。
男性研究者の17.2%が未婚であるのに対して、女性研究者の41.0%が未婚である。荒い判断ではあるが、割合的には約2倍の未婚率である。有配偶率(既婚率)という見方でいくと、女性研究者は53.3%、男性研究者は81.0%。
労働力調査総務省)によると、平成16年の女性雇用者*1(非農林業)における有配偶率は56.9%であるので、一般の女性雇用者と女性研究者の間に大差はない。しかしながら、働いている女性の有配偶率が低いのは事実のようである。(以上、第1−序−25図を参照。)
女性研究者のうち、子どものいない人の割合は60.4%で、男性研究者の33.9%と比較すると大きな差が見られる。(以上、第1−序−26図を参照。)
ただ、気になるのは、対策としての積極的改善措置(ポジティブ・アクション)に関することである。女性研究者に対する出産・育児支援策とポジティブ・アクションとは、微妙に論点がずれていないか。以下は白書の本文より。

 平成11年6月に施行された男女共同参画社会基本法においては,あらゆる活動に参画する機会に係る男女の格差を改善するため,必要な範囲内において,男女いずれか一方に対し,活動に参画する機会を積極的に提供する積極的改善措置(ポジティブ・アクション)を実施することを国及び地方公共団体の責務としている。12年12月に閣議決定された男女共同参画基本計画においては,国の政策・方針決定過程への女性の参画の拡大とともに,企業,教育・研究機関,その他各種機関・団体等の自主的な取組の奨励等を行うことを施策の基本的方向としている。
 ポジティブ・アクションには様々な手法があるが,その一つに目標数値とその達成期限を掲げるゴール・アンド・タイムテーブル方式がある。この方式は,日本学術会議において採用されており,平成12年6月に,女性会員比率を今後10年間で10%まで高めるという目標値を設定することが提言された。

アメリカの差別撤廃措置(アファーマティブ・アクション*2の問題と重なる部分があるが、逆差別の問題が発生する懸念がある。なかなか難しい問題だと思う。

学歴によって子どもを産み育てる環境に著しい差があり、出生率にも差があるようならば国は早急に対策を打つ必要があるのではないだろうか。高学歴の女性が子どもを産みにくいというのは、個人・社会双方にとって不幸なことだと思う。

http://www.gender.go.jp/whitepaper_entire-index.html

<関連>
2005年12月27日発表
名古屋大学・教員採用におけるポジティブ・アクションについて

 名古屋大学はかねてより、男女共同参画を進めてきたが、このほど、女性教員比率を上昇させるための方策として、全学の公募人事HPの冒頭に、ポジティブ・アクションとして、「名古屋大学は業績(研究業績、教育業績、社会的貢献、人物を含む)の評価において同等と認められた場合には、女性を積極的に採用します。」との文言を掲示することを、教育研究評議会で決定した。本決定により、名古屋大学が大学全体として、ポジティブ・アクションを進める姿勢を学内外に広く周知することとなる。

*1:雇われて働いている人の意味。雇っている人という意味ではない。

*2:米ではaffirmative action、英ではpositive discrimination。非白人少数民族・女性などに対する差別をなくすための優遇措置を指す。