カセットプラント・生命・循環

カセットプラント

国際芸術センター青森(ACAC)では、「山口啓介 睡蓮の地球図」展が開催されています。会期はあと1週間、5月20日までです。山口啓介氏(1962〜、兵庫県)は箱舟や植物の種子など、運ばれるもののイメージを巨大画面の版画や絵画で表現してきたアーティスト。
ギャラリーBで展示されている「カセットプラント」はとにかく美しい作品です。(正式な作品名は「水晶宮、青森」(2007年)) 私はこれが見たくて足を運びました。

ギャラリーに入ると、色鮮やかな「カセットプラント」が窓いっぱいに敷き詰められて、とても美しい。このままカフェにもなりそうな素敵な空間です。「カセットプラント」とは、カセットのケース(実際に使われていたのはTDKのもの)に乾燥させた花を入れ樹脂で封印したものです。昔はよく使ったカセットのケースが花を入れるにはピッタリのサイズだったとは驚きです。
ギャラリーAでは大小42点の絵画と版画が展示されています。展覧会の題名にもなっている「睡蓮の地球図 ドローイング3による」(2007年)は、モネの睡蓮(まさに現在、東京・六本木の「国立新美術館」で見られます)からインスピレーションを受け、生命体からなる世界を表現しているようです。
「生命体」は無数の矢印からなる流れから構成されています。動物も植物も微生物も体内に循環があって生命を維持していますが、まさに循環とは生命を語る上でのキーワードだったことに気付かされました。
小学生の時に、近所の溜め池ですくったミジンコを学校の顕微鏡で覗いた興奮が蘇りました。裸眼では粒にしか見えないミジンコにも心臓があり、機械式の時計のように正確に動いていました。絵画で表現された無数の矢印は、心臓から体の中に体液が運ばれていく様子を彷彿とさせます。

山口氏の作品の底流には、生命や遺伝子の伝達、危機という主題があるようです。「生命とは何か」という問いを常に追いかけているように見えました。多種多様な花が閉じ込められた「カセットプラント」を見て、自然界にある植物もまた「完成された創造物」なのだと再認識しました。あまりに自然は美しい。
写真はACACの敷地内、展示室に向かう途中にある木々。青森では今まさに新緑が美しい季節です。