国際芸術センター青森・土俗と神話

井田勝己「時の神殿」

青森市南部の森の中には、知る人ぞ知る国際芸術センター青森(ACAC)があります。今月(2007年8月)のJAL機内誌「SKYWARD(スカイワード)」でも紹介されていますが、落ち着いた雰囲気の中で、現代美術を心ゆく楽しむことができるスポットになっています。
ちょうど夏休みの今は、井田勝己・荻野弘一彫刻展「土俗と神話〜物語が生まれる場所」が開催されています。会期は8月26日(日)まで会期中無休、開館時間は10:00〜19:00で入場無料です。上から見るとドーナツのような形をした展示スペース(ギャラリー)は、中央を横切る通路の左右でそれぞれギャラリーA、Bと名付けられています。
ギャラリーAでは井田勝己、Bでは荻野弘一の作品が展示されています。井田は船や神殿を用いた表現を得意とする彫刻家で、荻野は自然石の魅力を表現するのが得意な彫刻家。前者が荘厳ならば、後者は温和と表現できそうな、大きく性格の異なる彫刻が見られます。
円形をした展示棟に囲まれて、水をたたえる「水のテラス」と呼ばれる場所があります。興味深いことに、この「水のテラス」や展示棟の周辺にも作品が置かれています。何度かACACを訪れていますが、このような展示は初めて見ました。
このオープンスペースに置かれた作品を紹介したいと思います。池の中に要塞のように建てられているのは、井田勝己の「時の神殿」(右上写真)。重量感のある花崗岩を用いて池の中に建てられた「神殿」は、宙を漂う宇宙船にも、時をさまようタイムマシンにも見える。要塞のように孤立しつつも、水の中に屹立する姿は、我々の住む世界の危うさと力強さを表現しているようである。

中央の通路の先にあるのは、荻野弘一の「サカナの国」。すべすべとした丸みとパカッと開いた口は、とても可愛らしい。石の持つ温かみが素直に表現されていて、子どもが喜びそうな作品である。
個人的には、ギャラリーAにある井田の「時の記憶」という作品が気に入った。真鍮でできた黄金の麦の上に浮くような白い船。生命感あふれる大地にさまような船は、不安と希望の間をさまよう我々の姿か。
夏休み中、ACACでは様々な体験学習が行われるので、関心のある人は足を運んではいかがでしょうか。
 
国際芸術センター青森(ACAC)
青森市合子沢字山崎152-6
017-764-5200