フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展

フェルメール「牛乳を注ぐ女」

東京・乃木坂の国立新美術館で開催されているフェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展に出かけてきました。
現存する作品はわずかに30数点ながら、圧倒的な存在感を誇るヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer,1632-1675)。傑作中の傑作「牛乳を注ぐ女(Milkmaid)」は日本初公開。
引き込まれんばかりの深い青色が特徴的ですが、こちらはラピスラズリという青い鉱石に亜麻仁油を溶いて作った絵の具の色。ラピスラズリは当時アフガニスタンでしか産出せず、黄金以上に高価な交易品でした。栄華を極めた17世紀のオランダを垣間見れますね。
「牛乳を注ぐ女」はわずか45.5×41センチの小さな作品。展覧会ではとても詳細は見られませんが、全体の雰囲気は十分に堪能することができます。遠近法を利用しつつも、テーブルだけはわざと遠近法に従わせず、広がりのある構図。何度も書き直されたという「女」の腕は、力強さ、優しさ、そして緊張感を併せ持っている。白く細く流れる牛乳は時間が止まり、時間を越えて今我々の前においても注がれている。
オランダ風俗画は、単に当時の人々の生活を描いただけでなく、教訓を滲ませているのが鑑賞のポイント。享楽におぼれる男女の姿は、醜くも人間味にあふれている。
アムステルダム国立美術館のオランダ美術コレクションから油彩画40点、水彩画9点、版画51点、工芸品16点の合計116点、大変見ごたえのある展示となっています。静物画に採用されることが多い食器などの工芸品、リュートなどの古楽器の展示は、当時のオランダ美術を知る上で、とても参考になります。
 
写真は、ヨハネス・フェルメール「牛乳を注ぐ女」(1658-59年頃 油彩、カンヴァス 45.5×41 cm)、©Rijksmuseum Amsterdam