東京上野・ウルビーノのヴィーナス展

ウルビーノのヴィーナス展

青空広がる3月のある日、国立西洋美術館(東京上野)で開催されている「ウルビーノのヴィーナス展」に出かけてきました。
美の女神ヴィーナスを巡って、古代からルネサンスにいたるヴィーナスの変遷、神話を題材としたヴィーナスの世界を存分に堪能することができます。
日本初公開となるティツィアーノ・ヴェチェッリオ(TIZIANO Vecellio)の「ウルビーノのヴィーナス」(ウフィツィ美術館)は大変見ごたえのある絵でした。

透き通るような白い肌は美しくなまめかしい。黒い瞳はじっとこちらを見つめている。金色の髪はふわりと散らされ、何の恥じらいもなくさらされた乳房には、神聖なるエロティシズムを感じる。
本物を目の前にするとジッと見つめられている気がして、自然に絵の中央にあるヴィーナスのお腹に視線が行く。少しぽっこりとしたお腹は身ごもる女性を連想させ、豊穣なる女性の姿を強く印象づける。
部屋の奥では侍女たちが衣装ケースから衣服を取り出していて、豊かな生活の象徴となっている。
 
気に入った絵をもう一枚紹介するならば、アレッサンドロ・アッローリ(ALLORI, Alessandro)の「ヴィーナスとキューピッド」。

ウルビーノ」よりもさらに足がスラリとして、空を舞うかのような姿。キューピッドを見つめる視線も優しい。深い緑色の背景に白い肌のヴィーナスは美しく映える。
写真は展覧会で展示されているものではないが、同じくアッローリ直筆でモンペリエのファーブル美術館所蔵のもの。展示されているウフィツィ美術館所蔵の作品には腰のヴェールがなく、足が少し手前に出されていて、さらにスラリと見える。
草木萌える歓喜の春にふさわしい展覧会であった。
 
画像出典:Web Gallery of Art, searchable fine arts image database