田んぼアートと商業化

田んぼアートの広告抜き取り

青森県田舎館村で驚愕の事件が起きた。村おこしイベントとして定着した感のある「田んぼアート」に今年度から広告が導入されたのであるが、突然広告絵柄の抜き取りが決まったのである。
毎日新聞Yahoo!ニュース)2008年7月5日付記事の<田んぼアート>もったいない? 企業広告絵柄を抜き取りより

田んぼアート」で知られる青森県田舎館村で4日、スポンサー企業の絵柄を描いた稲を村職員が抜き取る騒動が起きた。水田地権者から「企業PRは村おこし事業の趣旨に反する」とクレームが出たためだ。6月1日の田植えから約1カ月経過。大黒様などの図柄の輪郭が既に表れてきており、村内では「なぜこの時期に」と賛否両論が渦巻いている。
抜き取りは3日の「むらおこし推進協議会」(会長・鈴木孝雄村長)と検討委員会の合同会議で決定。地権者で前村長の佐藤隆司さん(64)が「広告絵柄の稲を抜き取らないと、来年から水田を貸さない」と発言し、6対5で決まった。
抜き取り作業は午前9時半ごろから職員約20人で始め、約1時間半で終了。作業中、反対派村議や農協女性部員らが「住民を無視していいのか」「抜かないで、お願い」などと声を上げた。
広告の図柄は、共催者の地元新聞社と航空会社の社名やシンボルマークなど。抜き取りに反対だった鈴木村長は「佐藤さんとは農地を借りる契約。村おこし事業を拡大するため資金が欲しかった。(地元紙との)契約料200万円は返却したい」と語った。
アート水田約1.5ヘクタールのうち約1ヘクタールの地権者である佐藤さんは「しばらく協議会の会合には出席しておらず、最近になって広告図柄があることを村人から聞いた。しかし、農地の賃貸契約には広告のことが書かれていない。村おこし事業に企業宣伝は不要だ」と話す。
地元紙側は「図柄が決まったのは田植え直前だったが、水田使用料として昨年秋に契約した。広告抜き取りの電話連絡を受けたのは昨日で、なぜ今になって言い出すのか」と困惑している。
村内の主婦(50)は「佐藤さんも協議会の委員。真意が分からない」といい、ある村議は「今まで単独でやってきた。広告図柄は入れるべきではない」と話していた。【塚本弘毅】

小さな町で行われる地元民だけの伝統行事に、商業化の波が押し寄せたならば、伝統を守るために商業化を食い止める必要はあるかもしれない。しかし、今回の件はどうだろう。
田んぼアート」は「村おこしイベント」ではなかったのか。村の知名度を上げていくのが、このイベントの趣旨ではなかったのか。さらに規模を拡大させるため、商業化の方向を探るのは必然の流れである。
広告がなかったら、青森ねぶたや弘前ねぷた、さらには新興の五所川原立ちねぷたは、ここまで規模を拡大させなかっただろう。