ナンシー関 大ハンコ展


突然のドカ雪に、雪に慣れているはずの青森市民もさすがに準備不足の様子。そんな雪の日(2008年11月20日)に「ナンシー関 大ハンコ展」は開幕した(会期は2008年12月7日まで)。東京、名古屋、仙台、札幌と巡回し、遂にナンシー関の出身地・青森に帰ってきた。
ナンシー関については雑誌等で名前は知っていたが、独特の辛口コラムに正直冷ややかな視線を送っていた。消しゴム版画についても、たかが消しゴムと軽く見ていたと思う。本展覧会は、そんな偏見を大いに覆す見事な展覧会であった。

ナンシーが遺した消しゴム版画のハンコ5,000個強が全個集合している。その数にまず圧倒される。消しゴム版画に描かれた人物は、ただ顔が似ているだけでなく、その性格まで想像させるほどに生き生きとしている。鮮やかなのが、似顔絵に添えられた短い言葉。思わず唸るほどに的確な表現の数々。不覚にも噴き出しそうになるユーモアもナンシーの真骨頂だ。 
(C)NANCY SEKI
全く意外だったのが、著名人だけでなく普通の人々の所作や行動、ありふれたモノの数々を彫りに彫ったということ。それはもう、見るものすべてを彫る勢いで。細かい動きの細かい描写は葛飾北斎「北斎漫画」を彷彿とさせる。どの版画にも愛情が感じられて、ナンシーは人も動物も大好きだったんだなぁって感動しきり。人が大好きだから、あんなにバッサリ斬れるんだなと再認識。愛情がないと叱れないのと同じことだ。
ナンシーが母校の青森市立堤小学校に寄稿した文章もイケている。学校のすぐ近くに「棟方志功記念館」ができた縁もあって、図工といえば版画だったこと、掃除の時間に雑巾を持って棟方志功のモノマネをすることが全校規模で流行ったことが紹介されている。児童たちが床に顔をこすり付けるように雑巾をこする様子を想像して大爆笑してしまった。
ナンシー関の偉大なる業績に今一度敬意を表したいと思う。

ナンシー関全ハンコ5147

ナンシー関全ハンコ5147

青森展では、ナンシー関公認 消しゴムハンコ押し師による“ナンシー関謹彫”の印が押されている作品集が限定販売されている。すかさず購入です!