ACAC・AIR展「月下の森」

久しぶりに青森アートな記事を掲載してみます。

国際芸術センター青森(ACAC)では、秋のアーティスト・イン・レジデンス(AIR)展「月下の森」が開催されています(2008年12月14日まで、会期中無休、入場無料)。

ポスターの雰囲気が以前撮影した写真に少し似ていて勝手に親近感。
2008年秋のAIRのテーマは「月下の森」。鬱蒼とした森は古来より神話や民話の舞台となってきた。未知なるもの、自然なるものへの畏怖、異空間への誘(いざな)い。森から受け取るインスピレーションはいかなるアートにつながるのか。森に囲まれた青森にふさわしいテーマと言えるだろう。

カン・イング(韓国)「踊りを踊る」
ACAC周辺で収集した石をワイヤーでつなげ、それを集合させた作品。ACACの池とギャラリー内で見られる。「石はかなり昔からここに存在していたのです」という作者の言葉に改めて驚かされる。身の回りにある石も砂もすべて昔から存在していて、静かに悠久の歴史を見守ってきた。カン・イングの作業によって、ずっと静かだった石も今気が付いたように踊り出す。
個人的に興味深かったのは、シャーロット・マクガワン=グリフィンの「赤い灯籠」。ギャラリー内に鬱蒼とした森を連想させる切り絵が飾られ、背後から光が点(とも)される。昔話を見るような懐かしさがあるが、作者によれば自然の前論理的理解に起因する儀式的なことやトーテム的な崇敬物が背後にあるという。難しい表現になっているが、いわば自然崇拝的な感覚であり、神社を参る日本人ならば誰でも自然に身に付いている感覚である。
吉本直子は漂白された衣服をモチーフにした作品「忘却の川」を残す。五所川原の河原地蔵尊で続けられる衣服の奉納からもインスピレーションを得ているようである。
吉賀あさみは薄い布地にぼんやりと描かれた絵画「萢(やち)」を残す。興味深いのは、使われている絵の具が青森産の天然顔料であるということ。津軽半島で採取した赤色と緑色の土、雲谷峠山頂付近から採取した黄色の土を原料にしています。
青森をテーマに現代アートしてみたという意欲的な作品が並びます。関心ある方は是非足を運んで頂きたいと思います。
ACAC周辺に配置された作品を見るのも楽しいです。