馬場のぼる展・特別展太宰治と美術

青森県立美術館では、「馬場のぼる展」「特別展 太宰治と美術」の豪華2本立てが開催されていますが、最終日前日になってようやく訪問できました。

馬場のぼる


「馬場のぼる」(1927-2001)は、青森県三戸町出身の絵本作家、漫画家。手塚治虫や福井英一とともに「児童漫画界の三羽ガラス」と呼ばれ、漫画の黎明期を代表する漫画家の一人でした。絵本「11ぴきのねこ」シリーズで広く知られていますが、シリーズ作品は29年をかけて6冊が刊行されました。

11ぴきのねことあほうどり」は、小学校低学年の時に何度も何度も読みました。ねこたちが作るコロッケが、大好きだったコロッケ(当時1個20円)にそっくりで、とてもワクワクした記憶があります。次々に作られる「コロッケ」、「たいやき」の形をした気球、美味しそうな「鳥の丸焼き」・・・思えば食べ物に溢れた作品でした。
アンパンマン」で知られる「やなせたかし」(1919-)は、アンパンマンの誕生の裏に自身の飢餓体験があり、「飢えた人を救うのが本当の英雄」という信念があると言います。馬場のぼるも特攻隊員として訓練に明け暮れた経験や、戦後直後は満足な仕事に就けず苦労した経験を持っており、食べ物に囲まれる幸せも伝えたかったのではないかなと思ってしまいます。

戦争の悲惨さを知っているからこそ描ける、無邪気な「ねこたちの笑顔」ではないかなと思いました。

特別展 太宰治と美術


今年生誕100周年を迎える「太宰治」(1909-1948)は、言わずと知れた昭和を代表する小説家。「人間失格」などの作品は、没後60年を経た今日においても色あせることなく読み継がれています。
小説家として絶大な知名度を誇りますが、若かりし頃に芸術の道に進もうか迷っていた経歴はあまり知られていないと思います。太宰の学生時代の英語ノートに、英語のスペルが一つもなく、ひたすらスケッチや落書きだらけだったことに大爆笑。ほとばしる夢の一端が垣間見れました。

太宰治『自画像』1947年頃 油彩
太宰自身が残した油絵をはじめ、太宰を取り巻いた同時代の作家の作品を通じて、小説家太宰治の「人物そのものとしての側面」を浮き彫りにしていきます。

小館善四郎 『おべんきょう』1945-46年 キャンバス・油彩
太宰治の義弟・小館善四郎(1914-2003)が描く少女の姿に愛情が感じられて、素直な感動を覚えました。小館は太宰の妻と姦通事件を起こしてしまい、太宰との間に複雑な影を落としてしまいます。
太宰治の親友・阿部合成(1910-1972)が描く情熱的な作品にも胸を打たれました。阿部は若くして才能を謳われましたが、戦前は反戦画家の烙印を押され、以後も画壇から孤立しながら独自な画境を追求しました。
太宰を含め、太宰を取り巻く人物一人一人の生き方の「濃さ」に圧倒されました。人間として、情熱の赴くままに生きていく逞(たくま)しさを感じずにはいられない展覧会でした。