弘前・翠明荘(1)


ある夏の日、青森グルメクイーンのジャミンさんとともに、弘前市にある「奥膳懐石 翠明荘」を訪問してきました。いま回想すれば、まさに「真夏の夜の夢」のようなひと時でありました。
ジャミンさんのイメージは、例えるなら弘前バスセンターの前にある「木花咲耶姫(このはなさくやひめ)」でしょうか。
ジャミンさんは青森グルメへの造詣が深く、何よりも青森を愛する姿勢にいつも心を打たれます。青森のことを深く知り、海外を含めた他地域の方との交流も行っていて、青森が誇る逸材だと思います。そんなジャミンさんとの貴重な時間を楽しむため、相応の店としてこちらを選ぶことにしました。

重厚な門構えの翠明荘。女将の細やかなおもてなしを受けて、お邪魔します。
翠明荘が建築されたのは1895年(明治28年)。戦前は第五十九銀行(青森銀行の前身)頭取の高谷英城氏の別邸「玄覧居」として使用されました。 堀江弥助(名工堀江佐吉一族:重要文化財青森銀行記念館や斜陽館等の建築で有名)の施工による建築は、総檜・入り母屋造りで、屋根は丸桟銅板葺き、内部は書院造りを基調としています。

「翠明荘」と書かれた額。
写真はありませんが、座敷から望む庭園は、名代の茶人・小堀遠州好み桂離宮枯山水の流れをくむ茶庭。京都より呼び寄せた名庭園師、辻地月の設計による手彫りの灯籠、侘びた庵など粋を凝らした造形、自然のたたずまいと調和した美しさで目を楽しませます。(紹介文はご紹介のページより引用、再構成しました。)

通して頂いた部屋は、大きな庭園が眺められる部屋の一つ。歴史を感じる重厚な雰囲気の中にあって、くつろぐほどに心地良い部屋となっています。供されたお茶を頂いていると、庭園から鹿威(ししおどし)の音が静かに響きます。
今回ご紹介するのは、ある夏の日の「奥膳懐石 白神」(10,500円)です。雅なる料理の世界をしばしご堪能下さい。

先付二種より鮎のほぐし。独活(うど)、軸三ツ葉、蓼の葉。
遥かなる夏の日を思い巡らせる鮎の味わいは、優しく口の中で崩れて行きます。

先付二種より雲丹蕃茄寄せ(ウニトマト寄せ)。キャビア、美味出汁。
朝顔の花を思わせる器に、そっと乗せられるウニトマト寄せ。トマトの優しい酸味をウニの芳醇な旨みが包み込みます。

膳菜 栄螺(サザエ)ずんだ和え、夏もずく、川海老艶煮、ほうずき百合根、玉蜀黍(トウモロコシ)真丈(シンジョウ)、白瓜昆布ジメ、団扇(うちわ)長芋。
色とりどり美しく、美味しく丁寧に作られた小料理の数々。しばし眺めては溜め息をついてしまうほど見事なものです。味わいも被(かぶ)らないように、甘味、酸味、塩味などがバランス良く配置されています。川海老艶煮は、バリバリと殻ごと頭も手もすべて食べられます。玉蜀黍真丈はキュッと来る甘さが魅力的。団扇長芋はほんのりピンク色で飾り切りが見事、津軽の郷土料理にある紫蘇(シソ)風味の長芋です。

お椀 冬瓜すり流し、蟹豆腐、針赤ピーマン、とんぶり。
涼しげなガラスの器に、楓の葉をあしらって登場したお椀。優しい味わいの冬瓜すり流しに、蟹豆腐が浮かんでいます。ちょこんと乗った赤ピーマンととんぶりが、色彩的にも食感的にも素敵なアクセント。
料理はまだまだ続きますが、まずはここまで。
 
奥膳懐石 翠明荘 (HP)
0172-32-8281
青森県弘前市元寺町69
11:00〜13:30
17:00〜20:30
月曜休(特別期間除く)