青森・鳴海中華そば

青森のラーメンを語る上で欠かすことができない青森市の「鳴海中華そば」を紹介しましょう。日本経済新聞電子版の連載「列島あちこち 食べるぞ! B級グルメ」(略称「食べB」)の記事青森県編その3では、一日一麺さんの「鳴海中華そば」レポートメールが紹介されています。
一口に青森のラーメンと言っても、あまりに多種多様なラーメンが存在します。某番組であるお笑い芸人が「味噌カレー牛乳ラーメン」は分かりづらいから、「青森ラーメン」という名前にすればと提案していましたが、「青森ラーメン」の名で一括り(ひとくくり)にできるものではありません。一日一麺さんも仰る通り、津軽地方の「煮干し、焼き干しダシ」のラーメンは、他地域にはない独特の食文化だと思われます。
津軽のラーメン(中華そば)は、動物系が一切入らない煮干し(焼き干し)と昆布などの「伝統煮干系」*1、煮干し+豚骨などの「ブレンド煮干系」の2つに大きく分かれます(系統名は勝手に名付けました)。使われる麺も、無かんすいのうどんのような太麺から細い平打ちの縮れ麺、さらには手打ちや機械打ちなど極めて多種多様です。青森のラーメンを系統立てて分類したら、きっと面白いと思います。

煮干しや焼き干しを用いた「津軽ラーメン」の中でも異彩を放つのが、動物系が一切入らず、無かんすい*2のうどんのような麺が特徴の「鳴海中華そば店」です。

県庁近くの細い路地を入っていくと現れる「鳴海中華そば」。思ったよりも堂々とした店構えです。丸に海を書かれた商標が使われていますが、同じく青森市の有名店「まるかい」とは関係ありません。
店内はお世辞にも綺麗とは呼べず、歴史を感じるたたずまい。歴史を重ねたスチール製のテーブルには色あせたテーブルクロスが敷かれ、いい感じに錆びたパイプ椅子が壊れない程度でキシみます。メニューは潔く「中」(600円)と「大」(1050円)のみ。残念ながら、店内どこを見渡してもメニューは見当たりません。事前リサーチがなければ、注文もできないお店です。「大」はかなり大きいので、うかつに頼まないこと。「小」と注文しても「中」と同じサイズのものが登場します(笑)

鳴海中華そば「中」 (※写真撮影については、事前に店主に一言許可を得て下さい。快く承諾して頂けます。)
中華そばは、もうもうと湯気をくゆらせて提供されます。チャーシューとメンマがなかったら、うどんとの違いが説明できない…そんな独特な風貌を持っています。
スープは煮干由来の芳(かぐわ)しさが一面に漂い、琥珀色に透き通っていて「そばつゆ」のようです。ズズッとドンブリから直接スープをすすると、煮干や昆布の優しい味わいが口いっぱいに広がります。煮干由来の酸味は少なく、味わい深く仕上げてあります。

「驚く程綺麗に澄んでいて、カメラのピントが合わない」というのはさくらさんの名言。麺の上には分厚いチャーシューが2枚、ネギとメンマがささっと添えてある感じです。すっきりとしながらも味わい深いスープにネギが良く合います。メンマは柔らかく優しい味わい。

麺は手打ちらしいウェーブがかかっています。手打ちの醍醐味とも言える不均一な太さが、かえって自然味のあるリズムで口の中に入ってきます。同じ理由で不揃いな表面が心地良い歯触りや喉越しを実現していて、まるで口の中で遊んで行くようです。ラーメンとは思えない極太さが何とも言えないモチモチ感を伴って、食べていて楽しい麺になっています。表面の微妙な凹凸がスープを程良く絡め取るような感覚すら感じます。

極太なチャーシュー。表面はしょっぱ口で強めの塩分を感じますが、ローストポークのような味わいと程好い弾力が魅力的です。ゴロリと分厚いのに、脂っこくないのでスッキリと頂けてしまいます。

琥珀色スープ、極太麺、極太チャーシューがいずれも劣らぬインパクト。自己主張が凄まじい3つが見事に調和を見せる、まさに「三位一体」のラーメンと言えるでしょう。「まるかい」も凄いが「鳴海」も凄い。

鳴海中華そば「大」 (画像出典:一日一麺さんの記事
「鳴海」を知らずして「津軽ラーメン」を語るなかれ。
 
鳴海中華そば店
青森県青森市長島2丁目12-3
017-776-6873
10:00頃〜売切れまで(13:00頃) 
日曜・祝日休

*1:「純粋煮干系」では煮干以外の昆布が入らない印象となるし、「すっきり煮干系」では「すっきり」が個人差のある主観的表現となります。 動物系が一切入らない煮干し(焼き干し)と昆布などを用いた系統には、どんな呼び方がなされているのでしょうか。ご存知の方、ご教示下さい。

*2:「かんすい」とは炭酸ナトリウムのことで、小麦粉で作った麺に加えることにより黄色く発色し、いかにも中華麺らしい風味を漂わせる役割を果たします。食品添加物なので、敬遠される向きもあります。@nifty:デイリーポータルZ:重曹でスパゲッティがラーメンになるで紹介されているように、スパゲッティを重曹を入れたお湯で茹でるとラーメンのような雰囲気になります。私も実証しましたが、さほど美味しくありません(笑)